【告知『坂道と転び方』】
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「君たちの言う正常で正しい動作は私にとっては呪いの言葉でしかないんだ!」
僕と彼女は、人生における転倒から立ち上がれず暗く正常からは逸脱した場所で再び出会った。
【坂道と転び方】→ https://note.com/tanakannaika/n/nae88675cb2de?sub_rt=share_pb
進藤守はいつもよりもずっと口数の少ない白波百合を眺める。山吹薫と長い間、話し込んでいたことは知っている。白波の心の揺らぎもまたわかる。
口腔ケアは誤嚥性肺炎を予防する方法の一つということっすね。でも単純に口の中が清潔だと気分も爽やかになるっす。
もちろんそうだな。特に高齢患者や長い間入院生活を送っていると、嚥下機能の低下に加えて唾液分泌量の減少が見られやすいとされている。そうすると食べ物を咀嚼した後に、食塊形成がしにくくなる。
咀嚼した、もしくは調整された食べ物をうまく飲み込める形にできなくなるんすね。そうしたら食べたくてもだんだんと食べたくなくなるっす。
その通りだな。と進藤は一度、席を立つ。備え付けられた冷蔵庫の中を確認する。白波は振動を見て目を伏せた。
だんだんと食べたくなくなる。という表現は誰にも訪れる。口から食べる。ということができなくなった時、どこか自身の終末を感じてしまうものだからな。
だから適度に口腔ケアを続けて食べられる口腔内を維持していく必要があるんすね。やっぱり最期を迎える時まで、美味しくご飯は食べたいと思うっす。
食思に口腔内の環境は強く影響する。食事量が低下している人はもちろん誤嚥が疑われるときはあるが、単純なケアで改善することも経験するな。
昔話したかな?と思いつつ、栄養補助食品の試供品が余っていることに気がつき白波の前におく。首を傾げて白波は笑った。
他にも手を洗う、顔の周りを清潔にする。といった俺たちが普段行う当たり前の行動がそのまま食べ続けるという行為につながるんだよ。
当たり前のことっすか。でも当たり前に行っている行為もだんだんと当たり前にできなくなる。だからケアが必要になる。わかっているっすけど、わからなくなってくるっす。
考えすぎることも良くない。食べなければいけない。元気になれない。俺たちも食べさせなければならない。元気にできないから。・・・と考えすぎるとやはり食べられない。心因的な部分も大きいのだから。まぁ顔を洗って歯磨きをするとスッキリする。ということに関連するのかもしれないがね。
・・・肝の命じておくっす。
白波は名刺入れほどの大きさしかない栄養補助食品に手を伸ばし、一気に飲み干す。やはり山吹から聞いたのだろう。彼と白波と同じ名の響きを持つ主任の話を。
白波百合の覚書 3
・唾液の分泌量が下がることで食塊形成できずに食思の低下や、誤嚥につながる。
・口腔ケアと言った普段行う行為は、心因的にも作用し食べ続けることにつながる要因の一つ。
・ちょっと元気になってきた。
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
【心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる作品集!】
小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や優しさに触れ、心温まるエピソードも満載です!
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